「お金を使うのが怖い」みんなの心の声と理由
「お金を使うと、なんだか罪悪感を感じてしまう」「必要なものを買っただけなのに、心がざわつく」「お金が減っていく感覚が怖い」。
そんな悩みを抱えている人は、決して少なくありません。
特にここ数年は、SNSで“節約術”や“貯金額公開”が話題になる一方で、「お金を使う=悪いこと」と感じる人が増えています。物価上昇や将来不安も重なり、心のどこかで「使うことへの恐怖心」が強まっているのです。
しかし、お金は本来「自分の人生を豊かにするためのツール」。
使うこと自体が悪いわけではなく、「どう使うか」や「なぜ怖く感じるのか」を理解することが、心の安心につながります。
ここでは、実際の声や背景をもとに、「お金を使うのが怖い」と感じる理由を整理していきます。
「お金を使うことは良くない」という認知の歪み
「お金を使うのはもったいない」「浪費は悪いこと」。
こうした価値観は、幼少期の家庭環境や社会の空気から自然と身につくものです。
たとえば、親が「無駄遣いしないで」「節約が美徳」と繰り返していた場合、
お金を使う=悪、貯める=善という認知が強く根づきます。
一見まじめで堅実な姿勢に見えますが、行き過ぎると「必要な支出すら悪いこと」に感じてしまうのです。
また、SNSでは“浪費自慢”よりも“節約術”が称賛されやすい傾向があります。
誰かの「我慢強い節約生活」や「○年で○万円貯めた」という投稿を見て、
「自分ももっと頑張らなきゃ」と感じる──それが無意識のプレッシャーになることも。
本来お金の「良い・悪い」は使い方次第ですが、
“使う=ダメ”という偏った思考(認知の歪み)が、罪悪感や恐怖の根底にあるケースが少なくありません。
将来に対する漠然とした不安
「このまま使っていたら老後どうなるんだろう」
「急に病気になったら、働けなくなったら…」
そんな“見えない将来”への不安が、支出をためらわせます。
特に20〜40代は、社会や経済の変化を肌で感じる世代。
物価高や年金不安、雇用の不安定さなどから、「今のお金は将来の安心のために取っておかないと」という思考になりやすいです。
ただし、将来への不安が強すぎると「今を生きる力」まで奪ってしまいます。
本来は「貯める力」と「使う力」はどちらも必要。
貯めることで安心を得る一方、使うことで心を満たし、自己肯定感を高めることができます。
ファイナンシャルプランナーの間でも、
「貯金だけでなく“使う練習”をしてこそ、真の金銭管理」と言われます。
未来のために今を我慢しすぎると、心がすり減ってしまうのです。
「何もない自分」への不満
「自分には大した価値がない」「自分にお金を使うなんてもったいない」
──そんな自己否定感が根底にある人もいます。
これは、SNSなどで「努力している他人」と自分を比較する中で、
「何も成し遂げていない自分には贅沢をする資格がない」と感じる心理です。
お金の使い方は、実は“自己評価”と深く関係しています。
「自分の価値が低い」と感じる人ほど、必要な支出すら躊躇しやすく、
逆に「自分を大切にできている人」は、“満足する使い方”が上手です。
つまり、「お金が使えない」のではなく、
「自分を認められない」ことが根底にあるケースも少なくありません。
お金の不安を解くカギは、“使い方”を整える前に、“自分との関係”を整えること。
「使う=自分を肯定する行為」だと考えることで、少しずつ心の負担が軽くなっていきます。
「お金を使う=良」と思える使い方
「お金を使う=悪いこと」と思い込むと、どれだけ収入があっても満足できず、心が貧しくなってしまいます。
逆に、「お金を使う=自分や人を大切にする行為」と捉え直すことで、支出にポジティブな意味を見出せるようになります。
ここでは、後悔せず“良い使い方”と感じられる5つの方向性を紹介します。
① 身の丈にあった衣食住のため
衣食住は「生きるために使うお金」。これを削りすぎると、生活の質だけでなく心の安定まで損なわれてしまいます。
実際、厚生労働省の調査でも「生活必需支出(住居・食費・光熱)」を削るほど主観的幸福度が低下する傾向があるとされています(厚生労働省「国民生活基礎調査」2023)。
“節約”と“我慢”を混同せず、心身の健康を維持するために使うお金は、最も価値ある支出といえます。
② 自己投資のため
学びや経験への支出は、将来の自分を豊かにする「未来への投資」です。
経済産業省の調査によると、自己啓発やスキルアップに投資している人はそうでない人に比べ、年収・幸福度の双方が高い傾向にあります(経産省「社会人の学び直しに関する実態調査」2022)。
お金を“減らす”ではなく、“増やすために使う”と考えると、怖さよりも希望を感じやすくなります。
③ 家族やパートナーなどの大切な人のため
心理学的にも、人のためにお金を使うと幸福度が上がることが分かっています。
ブリティッシュ・コロンビア大学の研究では、自分のためではなく他者のためにお金を使った人のほうが幸福度が高いと報告されています(Dunn et al., Science, 2008)。
「プレゼントを贈る」「家族と外食をする」といった支出は、“つながり”を感じるための使い方として非常に健全です。
④ 生きがい・趣味のため
趣味や娯楽への支出も、「心の栄養費」として必要です。
総務省「家計調査」(2023)によれば、趣味・娯楽費に一定の支出をしている層の方が生活満足度が高い傾向が見られます。
「趣味に使うなんて贅沢」と思う人もいますが、“自分が自分でいられる時間”に投資することは、心の安定につながる支出です。
⑤ 自分への労り・ご褒美のため
過度な我慢を続けると、反動で浪費に走ることがあります。
心理学ではこれを「抑圧反動効果」と呼び、制限をかけすぎることで逆に反動的行動を誘発するとされています(Baumeister et al., Journal of Personality and Social Psychology, 1998)。
だからこそ、小さなご褒美を自分に許すことが、健全な金銭感覚を保つ鍵です。
「頑張ったから今日はカフェに寄ろう」「今月は少し高めのスキンケアを買おう」──それは甘えではなく、心のバランスを取るための使い方なのです。
あまりにも「お金を使うのが怖い」場合は注意|心の状態・病気
「お金を使うのが怖い」「お金を使うと気分が落ち込む」「必要な買い物ですらためらう」──
もしこうした状態が長く続くなら、単なる性格や節約意識ではなく、心の不調や疾患のサインである可能性があります。
ここでは、心理学や精神医学で報告されている代表的な症状と、その背景を紹介します。
① うつ病(特に重症の場合)
うつ病では、気分の落ち込みだけでなく、「お金を使うこと」への興味・意欲が極端に低下することがあります。
これは「快楽消失(アネドニア)」と呼ばれる症状で、これまで楽しかったことや買い物に対しても喜びを感じられなくなるのが特徴です。
厚生労働省のうつ病啓発ページでも、「日常の活動への関心や楽しみの喪失」は代表的な症状として挙げられています(厚生労働省「こころの情報サイト」, 2023)。
うつ状態のとき、「お金を使うのは無駄だ」「自分なんかに使う価値がない」と思い込んでしまうこともあり、自己否定感が金銭行動に現れるケースもあります。
② 不安障害・強迫性障害(OCD)
不安障害の一種である**強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder:OCD)**では、「お金を使うと不安になる」「使ったら取り返しがつかない」といった思考が止まらなくなることがあります。
米国国立精神衛生研究所(NIMH)によれば、OCDの特徴は「理屈ではないのに不安や恐怖が止められず、行動(確認・回避)を繰り返してしまう」こと(NIMH, 2022)。
お金に関しても同様に、“支出=危険”という強迫観念が形成され、実際の生活に支障が出る場合があります。
③ 金銭恐怖症(Chrematophobia)
あまり知られていませんが、「お金そのものに対して恐怖や嫌悪を感じる」状態を**金銭恐怖症(Chrematophobia)**と呼びます。
これは恐怖症の一種で、医学文献でも報告されており(American Psychiatric Association, DSM-5, 2013)、
「お金を見る・触れる・支払う」といった行為に対して動悸・めまい・強いストレス反応を示すケースもあります。
原因は、過去のトラウマ(借金・家庭の金銭トラブルなど)や、過度な罪悪感による条件づけが多いとされています。
④ ためこみ症(ホーディング障害)
逆に「お金を絶対に減らしたくない」「使うくらいなら貯めこみたい」と極端に感じる場合、**ためこみ症(Hoarding Disorder)**の可能性があります。
これはDSM-5で独立した診断名として認められており(American Psychiatric Association, 2013)、
「物を捨てられない」だけでなく、「お金を減らすことに耐えられない」という心理的特徴を伴うこともあります。
“失う恐怖”が強すぎて、生活に必要な支出まで我慢してしまうことも少なくありません。
⑤ 「お金が使えない症候群」とは
SNSやネット掲示板では、「お金が使えない症候群」という言葉も見られます。
これは正式な病名ではありませんが、臨床心理士の間では「強い不安・自己否定・完璧主義の組み合わせ」によって、支出が極端に抑制される状態と説明されています(日本臨床心理士会, 2024)。
「浪費したくない」ではなく、「必要でも使えない」という状態にまで至る場合、心理的サポートが有効です。
⑥ もしも該当した場合は
もし思い当たる症状がある場合は、早めに心療内科や精神科の受診を検討しましょう。
金銭感覚の問題に見えて、実際には「不安」や「抑うつ」といった根本の心の問題が原因であることが多いからです。
厚生労働省の調査でも、心の不調を早期に相談した人ほど回復が早い傾向があると報告されています(厚労省「こころのサポート事業」, 2022)。
お金の悩みを“性格”のせいにせず、心の状態として捉えることが回復の第一歩です。
専門家と一緒に、お金との関係性を見直すことが、安心して暮らすための近道になります。
「お金を使うのが怖い」という悩みを解消する7ステップ
「お金を使うのが怖い」と感じる人の多くは、単に“浪費を避けたい”のではなく、
「お金を失うこと」や「使った後の後悔」に対して強い不安を抱えています。
その不安を解きほぐすには、**「お金の使い方」よりも「お金との向き合い方」**を整えることが重要です。
ここでは、心理カウンセリングや行動経済学の知見をもとにした7つのステップを紹介します。
Step 1:「お金を使うのが怖い」と思う理由を明確にする
まずは、自分の不安の正体を言葉にしてみましょう。
「将来が不安」「浪費して後悔したくない」「親から怒られた経験がある」──その背景は人それぞれです。
心理学では、**“原因を認識するだけでも感情は弱まる”**ことが知られています(Lieberman et al., Psychological Science, 2007)。
頭の中でモヤモヤしている不安を、紙に書き出すだけでも、心の整理が進みます。
Step 2:家計簿などで現状の収支を把握する
「使うのが怖い」原因のひとつに、“現状が見えていない”不安があります。
今いくら使っていて、いくら残っているのかを明確にすると、漠然とした恐怖が減ります。
実際、金融広報中央委員会の調査(2023年)でも、「家計簿をつけている人の方が将来への不安が少ない」と報告されています。
スマホアプリ(例:マネーフォワードME、Zaim)を活用すれば、レシート撮影で自動管理も可能です。
数字で“見える化”すると、「まだ余裕がある」と気づけることも多いです。
Step 3:貯金と「使っていいお金」を分類する
「使うのが怖い」のは、“全部のお金が減るように感じる”からです。
そこで、目的ごとにお金を仕分ける習慣を持ちましょう。
たとえば:
- 「生活費」
- 「貯蓄(将来の安心のため)」
- 「自由に使っていいお金」
この3つを分けることで、「これは使っていい」と自分に許可を出せます。
行動経済学でも、「メンタルアカウンティング(心の会計)」という概念があり、
お金をカテゴリーで区別すると浪費が減り、満足度が上がるとされています(Thaler, Journal of Behavioral Decision Making, 1999)。
Step 4:「お金の目的」を言語化する
お金は目的をもって使うほど、満足度が上がります。
「何のために使うのか?」を意識し、使う理由に“納得感”を持たせるのがポイントです。
たとえば、「健康のための食材にお金をかける」「心を休めるためにカフェで時間を過ごす」など。
支出に目的があれば、「使ってよかった」という実感が生まれ、後悔しにくくなります。
心理学者のマーティン・セリグマン(Martin Seligman)も、「目的意識のある行動は幸福度を高める」と指摘しています(Seligman, Flourish, 2011)。
Step 5:「お金の価値観」を捉え直す
「お金を使うのが怖い」人は、“お金=減るもの”というネガティブな認識を持ちがちです。
しかし本来、お金は“流れることで価値を生むツール”。
「お金を使う=誰かを助ける・経済を回す・未来をつくる」と考えると、少し見方が変わります。
たとえば、心理学的には“他者貢献の支出”が幸福感を高めると報告されており(Dunn et al., Science, 2008)、
「使うこと」そのものが社会的・心理的な価値を持つのです。
Step 6:自分が有意義と思う使い道で「使う練習」をする
いきなり「怖さをなくそう」とするのではなく、少額から“使う練習”をすることが大切です。
例:
- 500円で好きなコーヒーを飲む
- 1,000円で読みたかった本を買う
- 2,000円で誰かにちょっとしたプレゼントを贈る
カウンセリングでも、「恐怖対象への段階的曝露(エクスポージャー)」という方法が用いられます(American Psychological Association, 2019)。
“少しずつ慣れる”ことが、心のリハビリになります。
Step 7:定期的にお金の使い方を「振り返る」
「使った=失った」ではなく、「使って何を得たか」を振り返りましょう。
1ヵ月の終わりに、「満足できた支出ベスト3」を書き出すだけでも、前向きな感情が強化されます。
これは「リフレクション・プラクティス(振り返り行動)」と呼ばれ、
行動心理学的に“ポジティブ感情を再学習する”効果が確認されています(Fredrickson, American Psychologist, 2001)。
【状況別】お金の使い方への不安対策
お金に対する不安や罪悪感は、年齢や立場によって原因や背景が異なります。
ここでは、代表的な3つの立場──学生・主婦・リタイア世代──の視点から、
「お金を使うのが怖い」と感じたときの具体的な向き合い方を整理します。
高校生や大学生などの学生の場合
学生が「お金を使うのが怖い」と感じる背景には、
・親のお金を使うことへの罪悪感
・奨学金や将来への不安
・収入が少ない中での支出ストレス
などがあります。
日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、
大学生の約6割が「お金に関する不安を抱えている」と回答し、
特に「親に迷惑をかけたくない」「将来の返済が心配」という声が多く見られます(JASSO「学生生活調査」2022)。
このような場合は、「お金を“借りる”」「お金を“使う”」ことを悪いことと捉えず、
「学ぶため」「経験のため」と目的を明確化して使うことが大切です。
例えば、友人関係を深める食事代、学業に役立つ書籍代などは、“未来への投資”として肯定的に捉えましょう。
また、金銭教育の専門家も「大学生のうちに小さな金額で“お金を使う経験”を積むことが、社会人になってからの金銭不安を減らす」と述べています(金融広報中央委員会「金融リテラシー調査」2023)。
主婦の場合
主婦層が抱える“お金を使う怖さ”は、
「家計を守る責任」「自分のために使う罪悪感」「家族に対するプレッシャー」など、
“他者基準”の価値観が影響していることが多いです。
ベネッセ教育総合研究所の調査(2021)では、
主婦層の半数以上が「自分のためにお金を使うことに罪悪感がある」と回答しています。
特に専業主婦の場合、収入を「家族のお金」と認識しているため、自己投資や趣味にお金を使うことを後ろめたく感じやすい傾向があります。
この場合は、家計を**共通の“家族プロジェクト”**として捉え直すことが有効です。
「家族の生活の質を上げる」「家族全員が健やかでいられる」ことを目的とすれば、
“自分のために使うこと”も間接的には家族の幸せにつながる行動になります。
また、心理カウンセラーの研究では、
「自分を犠牲にする節約は、長期的には家庭全体の幸福度を下げる」ことも指摘されています
(藤田綾子, 家庭心理研究, 2019)。
つまり、“自分への支出”も家族のバランスを保つために必要なのです。
リタイアしたご年配の方々の場合
リタイア後の世代が「お金を使うのが怖い」と感じるのは、
「老後資金の減少への不安」や「収入がないことによる心理的防衛反応」によるものです。
内閣府の「高齢社会白書」(2023)によると、
65歳以上の約7割が「老後資金への不安を感じている」と回答しています。
特に年金受給者では、「お金が減っていくことに耐えられない」「貯金を崩せない」といった心理的抵抗が強く出やすい傾向があります。
しかし、健康寿命や社会参加の観点から見ると、
“使わないこと”が必ずしも安全ではありません。
日本老年学会は「生きがい活動や交際費への適度な支出が、認知機能や幸福度の維持に効果的」と報告しています(日本老年学会, 2022)。
つまり、老後資金を「減らさないため」ではなく、
「元気で過ごすために使う」という発想の転換が大切です。
趣味・旅行・社会活動など、自分の生活の質を保つための支出は、**“生きる力を支えるお金”**なのです。
「お金使うのが怖い人」のよくある質問
Q1. 貯金は「いくら」あれば安心できますか?
多くの人が「いくら貯めれば安心できるのか」と不安を感じています。
しかし、この問いには“万人に共通する正解”はありません。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2023)」によると、
単身世帯の平均貯蓄額はおよそ 872万円、二人以上世帯では 1,436万円 とされています。
ただし、中央値(実際に多い層)はそれぞれ 50万円前後/650万円前後 であり、数字だけを見て安心・不安を判断するのは現実的ではありません。
重要なのは、**「自分の生活コストの何か月分を備えておくか」**という視点です。
多くのファイナンシャルプランナーが推奨するのは、生活費の3〜6か月分の緊急資金(生活防衛資金)を確保すること(日本FP協会, 2022)。
この範囲を満たしていれば、「貯金が足りない」という不安は心理的な要素による部分が大きいと考えられます。
つまり、“安心できる金額”は他人との比較ではなく、
**「自分が想定するリスクに対して備えられているか」**で決まります。
Q2. みんな手取りのうち何割を貯金して、いくら使っているのでしょうか?
「他の人はどのくらい貯めているの?」という疑問もよく聞かれます。
総務省の「家計調査(2023)」によると、平均的な貯蓄率(可処分所得に対する貯蓄の割合)は 約32%。
つまり、手取りの約3割を貯金し、残りの7割を生活費や自己投資に使っている家庭が多いということです。
もちろん、収入・家族構成・ライフステージによってこの割合は変動します。
20代のうちは「貯蓄20%・使用80%」、
40代以降は「貯蓄30〜40%・使用60〜70%」が一般的な目安とされています(野村総合研究所「家計行動調査」2022)。
ただし、「貯めすぎ」もストレスの原因になります。
心理学的研究では、「お金を貯める目的が“恐怖や不安”に基づいている場合、幸福度が下がる」ことが報告されています
(Ruberton et al., Journal of Positive Psychology, 2016)。
「安心のために貯める」よりも、「生きるため・豊かにするために使う」意識を持つことが、心の安定につながります。
Q3. 必要な医療費や食費まで我慢してしまうことは病気ですか?
はい、可能性があります。
節約意識が強くなりすぎて、心身の健康を害するレベルまで支出を抑えてしまう場合は、
心理的ストレスやうつ状態の影響が疑われます。
厚生労働省「国民健康・栄養調査」(2022)によれば、
経済的不安を強く感じている層ほど「食事の質が低下」しやすく、
同時に「抑うつ症状のリスク」が高まることが示されています。
また、アメリカ心理学会(APA)は、“お金の不安が長期的に続くとストレスホルモンの過剰分泌を引き起こし、心身の健康に悪影響を及ぼす”と指摘しています(American Psychological Association, Stress in America Report, 2023)。
「節約のしすぎ」は、一見良いことに見えても、
生活の質や健康を削ってしまう危険性があります。
医療・食事・衛生といった**「生きるために必要な支出」**は、
“削らない勇気”を持つことも大切です。
まとめ
「お金を使うのが怖い」という気持ちは、決して珍しいものではありません。
現代の日本社会では、物価上昇・雇用不安・将来の年金問題などが複雑に絡み、
多くの人が“お金への不安”を抱えています。
実際、内閣府の調査(「国民生活に関する世論調査」2023)でも、
国民の 約7割 が「将来の生活に不安を感じる」と回答しており、
特に若年層や女性では“お金を使うことへの罪悪感”が強い傾向が確認されています。
しかし、お金は本来「安心を守るため」だけでなく、
**「生きる喜びを増やすためのツール」**でもあります。
お金を“使う”という行為は、
自分の人生をどう豊かにしたいかを形にする、能動的な選択です。
衣食住の安定、学び、家族や友人との時間、趣味や経験──
どれも「自分の人生を味わうために必要な支出」です。
それを「もったいない」「怖い」と感じるとき、
その裏には「失敗したくない」「後悔したくない」という思いが隠れています。
でも、後悔しないお金の使い方とは、
「何にいくら使うか」よりも、
“自分が納得して使えたか” で決まります。
心理学者バリー・シュワルツ(Barry Schwartz)は著書『The Paradox of Choice』(2004)で、
「人は“最適な選択”よりも、“納得できる選択”のほうが幸福を感じやすい」と述べています。
お金の使い方も同じで、“完璧”を目指すより、“納得できる支出”を増やすことが、心を軽くします。
あなたが今日使った500円が、
少しでも自分を楽にしたり、誰かを笑顔にしたりしたなら、
それは立派な“良いお金の使い方”です。
お金を「怖いもの」から「味方」に変えるには、
完璧な正解を探すのではなく、
「自分にとってのNo Regret(後悔しない)」を積み重ねること。
それが、
ノーリグ(NO REG)という名前が伝えたい、
“後悔しない選択”の第一歩です。
🕊 参考文献・出典
- 厚生労働省「こころの情報サイト」(2023)
- 日本学生支援機構「学生生活調査」(2022)
- 総務省「家計調査」(2023)
- 内閣府「国民生活に関する世論調査」(2023)
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2023)
- 日本FP協会「生活設計と金融リテラシーに関する調査」(2022)
- Dunn et al., Science, 2008
- Lieberman et al., Psychological Science, 2007
- Seligman, Flourish, 2011
- Fredrickson, American Psychologist, 2001
- Schwartz, The Paradox of Choice, 2004
